そして少々腑に落ちないと思いながらも、その優しい指の感触に心惹かれた優衣は簡単に考えることも放棄した。




(だってわかんないもん)




考えても答えが出ないものをいくら考えても仕方がない。


時間の無駄遣いだと自己完結した優衣は、先程までの思考回路を捨て去り龍之介に擦り寄る。


今は龍之介と一緒にいることの出来るこの時間のほうが優衣には大切なのだ。


こうしている間は、嫌なことも苦しいことも全部忘れて龍之介のことだけを見ていられるから。




「龍くん、龍くんっ!」




体を反転させ龍之介に抱きつきながらその名前を呼ぶ。


優衣は学習していた。


そうすれば、龍之介が必ず甘い声で自分の名を呼んでくれることを。