その時は受けた衝撃に話の内容全てが右から左へと擦り抜けていってしまった。


ただ、母が嬉しそうに話していたことだけは鮮明に覚えている。




(何か言ってたっけ…?)




とりあえず今現在"同棲"という言葉にぴんとくる節がない優衣は、クエスチョンマークを頭に浮かべて首を傾げることしか出来ない。


しかし不思議そうにしている優衣を見た龍之介は、一人納得したように頷いて。

そんな不可解な行動をとる龍之介に優衣は更に首を傾げる。




「…悪い。気にすんな」




真ん丸な目で龍之介を見上げる優衣の頭をいい子だから、と撫でながら苦笑いを零す龍之介。

よしよしとまるで犬を宥めるように優衣の髪を滑る指。


すると次第に、むぅと突き出していた優衣の唇も弧を描く。