本人にとってそれは喧嘩ではない。

龍之介がしているのはあくまで正当防衛であって、暴力ではないのだから(端から見れば同じだろうが)。


それに




「俺、喧嘩する気ねぇから」




(もう無駄な傷はつくりたくねぇ)




傷が出来ることによって感じる表面的な体の痛みなどそんなものはどうでもいい。


しかし、それを見たときに歪む優衣の顔は見たくない龍之介。


彼女が感じるであろう内面的な心の痛みが気掛かりで。


喧嘩したいなら他をあたってくれ、とその場を離れようとした龍之介だったが、それでもなお翔平は引く気配を見せない。




「何だよそれ。女が出来たからか?」


「……何でお前がそんなこと知ってんだ」