「…いい加減、決着つけようぜ」
そんな龍之介に翔平はギリリッと奥歯を軋ませ牙を剥く。
野生の動物のようなその姿。
完全に戦闘モードに切り替わっている。
だが、龍之介は翔平のその言葉に邪険そうに顔を顰めた。
(決着って…何の決着だよ)
二人の間にそびえ立つベルリンの壁並の温度差。
そもそも龍之介から危害を加えたことなど一度もなければ、いちゃもんをつけたこともない。
理由もわからぬまま毎度乱闘に巻き込まれているのは龍之介の方である。
いわば被害者である龍之介。
喧嘩を避ければよかったのでは、という声は今は聞こえないふりとして。
仮に傷を負わされた仲間の借りを返しに来たとでも言うつもりなら、お門違いもいいところだ。


