(それより明日の弁当の買い物行きてぇんだけど)
龍之介にとって今は目の前の男より家の冷蔵庫の中身のほうが重要だ。
そちらの方が断然興味がある。
しかし、さすがに本人を前にしてそんな本音を口にすることは出来ず。
とはいえ、どうやら龍之介の表情筋は正直だったらしい。
その顔はとてつもなく面倒臭そうに歪んでいたようで。
それを見ていた翔平の眉間に、いつもの龍之介に負けず劣らず何本もの縦線が刻まれたのがわかった。
「…なんだよ。俺、今忙しいんだけど」
龍之介はあからさまに大きな溜息を吐いて右手で襟足のあたりを掻く。
その行動に翔平の表情がまた険しくなったが、龍之介はまったく気にしていない。


