思い返せば、初めて喧嘩をふっかけてきたのも彼の方で。
それからというもの会うたび会うたび条件反射のように殴りかかってくるのだ。
こういった類は相手にしないのが一番。
そう重々承知している龍之介は、再度軽く謝罪を述べ来た道を戻ろうと一歩を踏み出す。
「おい、待てよ」
だが、相手に見逃してくれる気は毛頭ないらしい。
不機嫌そうに龍之介を呼び止める翔平から流れ出ている殺気。
あまり気分のよくないそれに龍之介は小さく溜息を吐いて歩き始めた足を止めた。
無視すれば、間違いなくその拳が飛んでくるだろう。
(…めんどくせー)
せっかくここ最近喧嘩の無い平穏な日を送ってきたのだ。
今面倒ごとは出来るだけ避けたい。


