だが、男が着ている黒の学制服にはどことなく見覚えがある。
桐花とは違う、ブレザーではないそれ。
(どこだっけなー…学ラン…学ラン…)
「……あ」
呪文のように学ランと頭の中で復唱しつづけ、ようやく頭に浮かんできた心当たり。
しかしそれは龍之介にとってあまりいいものではなくて。
「お前、あん時の…」
「宇佐美翔平だ、大上龍之介!」
制服に見覚えがあるのも当然だった。
男は龍之介が初めて優衣と会話をした日、ご丁寧にも校門まで出向いてくれた他校・紅和第一南高校の生徒の一人。
所謂不良校と巷では有名で、桐花とは同じ"自主性"を掲げていながら学力も校風も何もかもが正反対の学校の生徒だ(桐花はそれなりに頭が良い私立校だったりする)。


