何たる失態。
目の前の優衣に気を取られて、自分が何処にいたのかすっかり忘れていた龍之介は優衣の言葉に動きを止めた。
どう切り抜けるべきか。
一瞬の間にいろんなことを考えた結果、龍之介は優衣の頭を撫でていた手でその小さな頭をガシッと掴むと
「……遊佐」
と喧嘩の時くらいしか使わないであろう低く地を這うような声で優衣の名を呼び、鼻と鼻がくっつきそうになるくらいまで顔を近付ける。
(遊佐が痛いとかなんとか言ってるが、気にしてられねぇ)
「………俺がこっから出てきたって、誰にも言うなよ」
とにかく、こいつさえ黙っていてくれれば、と優衣を黙らせようと凄んだ龍之介だったが、優衣の口から返ってきた返事は龍之介の予想を遥かに上回るものだった。


