優衣からの呼び掛けに不思議そうな顔をして教室へ入ってきたのは幼なじみの健で。

どうやら本当に忘れ物を取りに来たらしい。


現れた見慣れたその顔に安堵したのか、突如ぶわっと緩みだす優衣の涙腺。




「う、ぅぇぇ…」


「な、え!?何、うー!?どうしたの!?」




自分の顔を見た途端泣きだした優衣にわたわたと狼狽える健。

とりあえず慌てて駆け寄り頭を撫でてやる。


龍之介のものとは違う兄のような健の手のひらの感触に、えぐえぐと肩を震わせ唇を真一文字に結びながら涙を落とす優衣。


悔し涙のようにも見えるそれに健は思わず顔を顰めた。