そしてこの感情の大きさはもう"仮"という関係では納まりつかないということも。


一歩進みたいと、切実に願う龍之介がいた。




「……俺が言わねぇと、な」




そう小さく、しかし強く呟いてキュッとシャワーの水を止める。




『付き合ったら、俺と仲良くなれるぜ?』




はじめにそんな曖昧な言葉で逃げ道をつくって曖昧な関係に持ち込んだのは紛れもなく龍之介で。


優衣がどこか一線引いていることにも気付いていた(無意識かもしれないが)。



今どき珍しいほどに律儀なこの男はそんな関係で次に進むなど出来はしない。




あの小さな存在を守りたいと思ってしまったから。