「…悪いな、優衣。まさかもう百合が帰ってきてると思わなかった」
そう言いながら、よしよしと優衣の髪を優しく撫でる龍之介。
龍之介の口から出た"百合"という名にチクリと小さく胸の奥が痛んだ気がしたが、優衣はそれを隠すように首を横に振って龍之介の言葉に答えた。
(…龍くんが、女の人の名前呼ぶの嫌なんて…私、どっかおかしくなっちゃったのかなぁ…)
悶々とそんなことを考える優衣の心知らず、龍之介はその手を引きながら靴を脱ぎ部屋の中へ入っていこうとする。
「あ…ちょっと待って、龍くん!」
勢いのまま中に進もうとする龍之介を慌てて呼び止める優衣。


