「…であるから…」




あれから二日。

優衣と龍之介の噂は水面下で着々と全校生徒に広がっていた。


しかし、龍之介の怖さと信じられない内容の噂だけに、それを口にする生徒はいない。




「……ふぁ……」




授業は苦手な数学。
窓の向こうには太陽を隠した曇り空。

そんな空を見上げながら教室に響く呪文のような教師の言葉にうつらうつらと首を揺らしている優衣。

勿論彼女は自分が噂になっているなど欠けらも気付いていない。



ガンッ



優衣が夢の中に一歩足を踏み入れたとき、教室の後ろのドアが乱暴に開けられた。




「お、大上…遅い、ぞ…?」




静まり返った教室。そこに教師の怯えたような声だけが響く。