(後ろにいるんじゃ顔見えないよぅ…顔見たいのに…)
そう思うものの龍之介の腕で固められている体は動くことなど出来ず、優衣はぷくっと頬を膨らませる。
そして腰に回っている龍之介の腕をペシペシと叩いた。
それに気付いた龍之介が不思議そうに首を捻る。
「ん?何…?」
「むぅ…これじゃ大上くんの顔、見えないの…さっきみたいなのがいい」
頬を膨らませ眉を寄せながら龍之介を見上げる優衣。
本人は睨んでいるつもりなのだが、例のごとく怖くはない。
まるで本物の小動物のような優衣の姿に、つい龍之介の顔が赤くなる。
「──っ馬鹿。いちいち可愛いんだよ、お前は」
それを隠す為か、龍之介は少々乱暴に優衣を向き合う形に抱えなおした。
それでも痣に響かぬよう自然と庇うように支えられた体。


