何度も恋に憧れたけれど。

そんな友達を羨ましいと思ったけれど。

それでも優衣が誰かを好きになることは今まで一度もなかった。


恥ずかしい…と浮かんだ涙を見られないよう抱えた膝に顔を埋め返事をした優衣だったが、そんな小さな抵抗は呆気なく解かれ。


涙を掬うようにそっと優衣の頬を撫でる龍之介の人差し指。



その指に導かれるように顔を上げれば、まるで色香を纏ったような龍之介の微笑みが優衣を待っていた。



トクン…トクン…




「…好きとかは、まだいい。俺もよくわかってねぇし」




引き寄せられるように龍之介の手へ擦り寄っていた優衣は、いつのまにか龍之介の膝の間に納まっていて。


近づいた距離に龍之介はより一層優しく優衣の頬に触れる。




「でも…付き合ったら……俺と仲良くなれるぜ?」




頬に触れながら口元を釣り上げる龍之介。


お世辞にも爽やかとは言えない笑みだが、漂う色気は半端じゃない。