「嫌じゃないんだろ?」




龍之介が喋るたび小さな吐息が優衣の耳を擽って。


それから逃げようにも後ろはフェンス、横からはいつのまにか伸びてきていた龍之介の手ががっちりと優衣の腰を掴んでいて逃げられない。




「で、でも付き合うって…よくわかんないよぉ…」




逃げられない状況に優衣は、うぅ…と小さく丸まる。

開いた瞳には止まったはずの涙が再び浮かんでいた。




「泣くなよ…誰かと付き合ったことない?」


「…うん…」




龍之介の言葉に何とも情けない気分になった優衣は、ふいっと視線を泳がせる。




(だって…今までそんな機会なかったんだもん。みんなが恋バナしてたって、私にはまだ早いからダメとか言うし…)





「好きとか…よくわかんないの…」