「あのう……」
「……誰かね!?」
キョウスケが叫ぶ。
「くるりんだよっ!」
扉のほうを見てみれば、メガネをかけた文芸部顧問、くるりんが立っていた。
もうくるりんとしか言いようがない。
「みなさん、楽しんでいるようで」
「それはもう!」
「オレ飛ばされているんだけど!?というか誰もまともに一曲歌いきっていない!!」
「ははは、現実を見たまえナオキ。――ワタシはこんなに楽しい」
「アンタは楽しいだろうよアンタは!!」
さすがにこの状態ではカラオケに来たとはいえない。
さっきから声を張り上げていたせいで、のどが渇ききっているが。
一番扉に近い席に、時計回りで最後になる席にくるりんが座る。
これからは真面目に歌おうということになり、机の上に置いてあったリモコンで各々好きな曲をいれていく。
分厚い本の見方もすぐにわかった。
最近の曲がわからないオレは、とりあえず普通と思える選曲をする。
いわゆるJ-POPで歌いにくいものもないだろう。
イントロが流れ始め、マイクが手渡された。
独特な音と、モニターに表示される字幕にあわせて歌う。
歌をまともに聞く人間もいれば、次に歌う曲を探している人間もいる。
その様は流れ作業にも思えた。
歌い終わった。
70点。無難だろう。
そして、次のリンにマイクを手渡した。



