「すまない。先に三人来たと思うのだが」
キョウスケは誰に対してもそのしゃべり方だな。
「ああ、文芸部の?」
「そうだ」
「先に来られた方はすでに部屋に入られていますよ。二階の廊下を左に曲がった突き当りの部屋です」
中の人が、手で指し示す。
「わかった。……あと、もう一人おっさんが来ると思うのだが」
おっさんって、くるりんのことか。
って、くるりんとしか呼べない……。
「はい聞いております」
「そうか、ありがとう」
そのやりとりをしている間、リンは物珍しそうに辺りを見回していた。
オレだって珍しく感じる。
まあ、なんとかなるだろう。
――波乱さえ起きなければ。
「やっと来たねー」
手狭な部屋に、文芸部六人が集まった。
黄色のライトが照らす、薄暗い密室。
――ここがカラオケボックスというものか。
「まあまあ好きなところに座って」
カナコが言ったので、オレは適当なところに座る。
部屋にコの字に配置されたソファーが三つあり、それぞれに二人ずつ座れるようだ。
カラオケ機から時計回りにキョウスケ、カナコ、サヤ、エイヤ、オレ、リンの席順になった。



