不思議病-フシギビョウ-は死に至る



「そんなにくるりんの名前を知りたかったらカナコ君に聞いてくれたまえ」

投げやがった。

キョウスケは自分の部活顧問の名前で他人に投げやがった。



リンは――さっきの意気投合でくるりんの名前はどうでもよくなったようだ。

仲間がいて嬉しいみたいな顔している。



「っと、ここだよ」

キョウスケが急に歩みを止める。

道路に面したその建物には『カラオケ』と書かれた看板が、

「ちょっと『ケ』が見にくいぞ」

ボロっちく掲げられていた。

外見が怪しくてオレ一人では入れそうにない建物だ。

「なに、どこのカラオケボックスも『ケ』が見にくいものだよ」

そう言ってキョウスケは、建物の隣の駐車場に自転車を止めた。

駐車場の自転車がまとまった場所には、すでに先行した三人のものと思われる自転車やバイクが止まっていた。

「では行こうか」

リンもカラオケは初めてだと言っていた。

少し緊張しているようにも見えた。





建物の中に入ると、遠くから歌声が聞こえているかのような錯覚に陥った。

カラオケボックスというものはここまで防音効果があるのか。



キョウスケはカウンターに寄り、中の人に話しかけた。