「ご冥福をお祈りしよう……くるりん」
「勝手に殺すな」
「さすがにそれはひどいです」
歩道を歩く三人。
残りの三人の姿はとうに見えなくなってしまっている。
「ところで」
リンが切り出す。
「その文芸部顧問のくるりんの本名は何ですか?」
素朴な疑問だ。
でも知っておかないと後々困るかもしれない。
「――くるりん、だよ」
「いや、本名を聞いているんですが」
「ああ、待ってくれ。くるりんはくるりんだ。それ以上でもそれ以下でもない」
以上と以下はイコールの部分がかぶっている気がする。
「もしかして……本名覚えていないんですか?」
「待ってくれたまえリン君。別にワタシが頭の弱いアホの子というわけではない。勘違いしないでくれ」
その年で記憶障害とはキョウスケも前途多難だ。
「待ちたまえ。……確かくるなんとかだ」
「確かじゃねーよ」
「もしかしたらワタシは本名を聞いたことがないのかもしれない」
「ああ、そうかもしれませんね」
「そうかもしれませんねじゃねえよ」
「よくあることだね。リン君」
「ですね」
ダメだこの二人。なんか意気投合している。



