「向こうのお寿司屋はよかったですよね」
リンが言って、どこかを指差した。
それも覚えがある。
「ああ、よかったよなあ」
「?もしかして二人とも、知らないのかね?」
キョウスケが不思議そうに言った。
何だ?
「向こうの寿司屋、潰れて今は釜揚げうどんだよ」
「あれ、そうだっけ?」
オレのインドアがたたっている。
「そうでしたか?」
リンもインドアっぽいからなあ。
「いや、潰れたんじゃなくて、遠くに移転したんだよ」
カナコが取り繕う。
指を差さなかったのは、きっとわからないほど遠くだからだろう。
そう、推測できた。
「そうだったんですか……」
リンはしょげている。
そこまで気に入っていたんだろう。
……移転には気付かなかったのだろうか。
「そんな話はほどほどにして早く食べたまえ」
言われて気付く。
皿に手を付けていないのはオレだけだった。
「ご飯を食べながら話すもんじゃありませんっ!!」
……自分で言ったボケだが、実行されるとツッコミが帰ってこなかった。
そして、そのことに突っ込めなかった。
自爆した。



