「まあはずれと言えばあっちの中華料理店かな」
カナコがどこかを指差して言う。
「中華料理もそんなに不味くはないだろ」
「まあ、味はね。うちの学校の生徒御用達だし」
そう言われて見当がついた。
オレは入ったことがないが、少しボロっちい個人経営の店だ。
「味も量も問題なし。ちょっと脂っこいくらい」
「じゃあ何が問題なんだ?」
うーん、とカナコが言葉を濁す。
しかし、口を開いた。
「あの店の裏にね、食材とか置いているんだよ」
「……外に?」
「うん。そして一部腐ってる」
それは危ないな。
衛生上に問題があるとは、料理店として考えられないことだ。
「もちろん、知っている人が少ないから流行っているんだけどね」
「そう聞くと、行かなくてよかったと思えるだろう?」
キョウスケが笑う。
ちゃんと考えてこの店にしていたのか。
「あっちの中華料理は美味い」
今度はエイヤがどこかを指差して言った。
いや、その方角は覚えがある。
「ああ。確かにあそこは高いけど本格的だよなあ」
「知っているかね?あの店はうちの学生をアルバイトとして雇っていることが多い」
「それが?」
「彼らが言うには厨房はきれいらしいが、正直接客に期待できんよ」
……うちの学校はアルバイトしてよかったけ?
つまり、そういうことなのかもしれない。



