「……ナオキさんにはちょっと難しかったですか?」
「嫌味だな、おい」
しかし、もう少し頑張らないといけない。
これからの予定。
アバウトに言うと、山から海に行く。
詳しく言うと、この展望台公園から商店街経由で海に向かうのだ。
あれ、そんなに詳しくなってない?
まあ適当でいいだろう。
適当なベンチに腰掛ける二人。
そのまま言葉もなくボーっとする。
ふう……。
「暇だな」
「嫌ですか?」
「嫌じゃない」
だらしないが、ここならこんな休息も許されそうだ。
夏なのに涼しい。
ずっとここにいたい。
このまま時間が止まってしまえばいい。
リンもとなりにいるしな……。
「春が来て、ずっと春だったらいいのに」
「春は過ぎたばっかりですね」
「……秋が来て、ずっと秋だったらいいのに」
「――四季があるからいいんじゃないんですか?」
リンの正論だ。
「時間の流れは絶対なんですよ。祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり。沙羅双樹の……」
リンの口上が止まる。
「どうした?」
「いえ……何も……」
続き……忘れたとか?
リンに限ってそれはない。
まあとりあえず……続きは。
「……沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理を表す」
「……はい、そうですね」
リンは元気がないようだった。



