不思議病-フシギビョウ-は死に至る



「どうしたんだ、リン!」

リンと一緒に走りながら、オレは叫んだ。

リンの顔は見えなくてもわかる。

オレにだってわかる。

そこにある感情を……意味を。

恐怖。

焦燥。

……悲壮。

「待て、待てって!!」

オレは足を止める。

オレの方が力が強い……リンはこけそうになりながらも、足を止めた。

あとに残るのは荒れた呼吸。

校舎の中を走ってきたオレたちはいつのまにか昇降口まで走ってきていた。

今、人はほとんどいない。

帰宅する人間と部活に行く人間で、捌けてしまったのだろう。

オレはリンが落ち着くまで待った。

何を思ってリンがここまで走ったのかわからない。

だけど何か意味があるんだと、オレは思っていた。

そして、その意味を知りたいとも思っていた。

教えて欲しい。

リンの素直な気持ちを。

「……大丈夫か?」

「……はい」

リンは落ち着いたようだった。

「無理にとは言わない……どうして走ったんだ?」

まるで巡査みたいだと思った。

「……答えられません」

自分が巡査だったらよかったかもしれない。

「まあ、いいけどさ。どうする?部活に戻るか」

「それはできません」