――結局授業は寝て過ごした。
これがオレのジャスティス。
「寝たらダメって言いましたよね」
「人間は睡魔に勝てないんだ」
なんて言いながら部室に向かうオレとリン。
部室の扉を開ける。
すると、中にはキョウスケしかいなかった。
「こんにちは」
いつもどおり挨拶をするオレとリン。
「あ……ああ」
キョウスケはテンションが高くなく、何だか歯切れが悪い。
「どうしたんだ?」
キョウスケの手には……一本の傘。
紺色の傘。
「どうしてそんなものを持っているんだ?」
「ああ、これかね?これは……」
そこでキョウスケは口ごもる。
一体どうしたというのか。
キョウスケは何か考えているようだった。
何か……大切なことを……。
忘れたくないような、何かを。
キョウスケはオレのほうを見た。
いや、正確にはオレの後ろ――リンを。
すると、キョウスケが不思議そうな顔をする。
「……キミは……」
「……っ!!」
急にオレの手がつかまれ、後ろに引かれた。
リンだ。
リンがオレの腕を引いているのだ。
そのままオレはリンにされるがまま、部室を出る。
駆け足で。
リンの背中はいつもよりも小さく見えた。
まるで、怯える小動物のように。



