オレは黙ってしまう。
反応に困る。
確かに海の向こう側は見えない。
見えない向こう側は自分達に関係してこない。
なら、意味がないと。
存在しても意味がないと。
リンはそう言った。
思わず納得してしまう。
観測できないものは存在しないと言ってしまうこの世界では、観測できないものは無価値だと。
確かにそうだった。
「……お粗末さまでした」
「……はい?」
「朝からこんなみょうちきりんなこと言われると困りますよね」
……オレがたまにやることだ。
どうやらさっきのはオレへの当てこすりだったらしい。
「……普段から迷惑かけてる。すいませんでした」
「わかってくれればいいんですよ。わかってくれれば」
リンは鼻を高くして言った。
「まあ、そんなヘリクツ聞くのも嫌いじゃないですよ」
「そうか、メンドクサイだけだろ」
オレのことだが。
「――人の言動には必ず意味があるんです。きっとその人は何かを考えて言った」
確かこの間も聞いたことだ。
「ヘリクツもその意味を考えると楽しいですよ。小説を読んでいるみたいで」
本好きのリンが言った。
……オレはそういうのは苦手だ。
もしリンの言うとおりなら、オレは小説を読むのは好きになれそうにないな。



