「そして、こうも思うんです。水平線の向こうには別の世界が広がっているんじゃないかって」
別の世界。
歩いては行けない、となりの世界。
「きっとそこではファンタジー小説のような出来事が起こっているんです」
それはとても夢のあることだろう。
だけどオレたちは歳を重ねるごとに知っていく。
「この歳になると、そんな世界はどこにも存在しないってわからされる」
オレはそう思う。
のだが、
「そうですか?」
とリンが言った。
「観測できないものを存在しないとは言い切れませんよ」
「まあそれでも存在しないけどな。異世界なんて」
「観測できなくても、外国はある、と言うのに観測できない異世界は、存在しない、と言ってしまうなんておかしいですよ」
それだけ聞くと、おかしくように思える。
リンは神妙な面持ちをしていた。
「でもそのファンタジーな世界は私たちに一切干渉してこない」
声のトーンが下がる。
「非常なんです、彼らは」
子供の夢を否定してしまう。
「見えない岸に、意味があるんでしょうか?」
たとえ存在しても無価値だ、とリンが言った。



