話にならないので話題を変えよう。



「多分夏になったら合宿するんだろうな、この文芸部は」

「……そうですね」

リンがまだ恨めしそうな声で答える。

「海だよなあ……。いいなあ、海。行きたいなあ」

「海ならそこにあるじゃないですか」

リンがバスの後方を指差す。

正確にはその向こう。

そういえば、

「リンは海の方に住んでるんだよな」

「もしかして、うらやましい、とか言い出すんですか」

「いや、磯臭いだろって」

「どこまで人をバカにするんですか」

悪い悪い。

まああの海は魅力がない。

だって、

「あの海って確か、海水浴場なかったよな」

その理由は、

「小学校のとき、海の清掃しに行きましょう、とかいう行事ありませんでしたか?」

それくらい汚いからだ。

流木、ゴミ袋、ペットボトル、エロ本……とにかく様々なものが落ちている。

最後のものに関しては誰かが宝の山と呼んでいた。

「……エロ本とは『得ろ本』、つまり見つけたらひろっていけというメッセージがこめられていると思うのだが、これいかに」

「そんな邪な考えを持つ人は海に流されてください」

流されない!