バスに乗り込む。
――さっきの声。
オレはその声を知っている。
「リン、おはよう」
オレはいつもどおり先頭から二番目、タイヤの関係で高くなった一人席に座るリンに声をかける。
「……あなたみたいな失礼な人、知らないです」
……はい?
疑問に思いながらもリンの前の席に座る。
「なにが失礼なんだよ」
リンはオレから目を背ける。
「……人のこと寸胴とか胸がないとか……」
「目のやり場に困らないとか魅力がないとか?」
「反省の色もなしですか」
てか、声出てたのか、オレ。
「……小さくて悪かったですね」
「すまんすまん」
身体的特徴というのは丁寧に扱わないといけない。
だからオレは、
「誰しも魅力があるもんだ」
と言っておく。
「……それ、さっき聞きました」
それも言ってたのか。
まあ、なんだ。
「今からでもがんばれる」
「もういいです」
リンは広げていた本に顔を沈めてしまった。
なんか人の空気の読めない子みたいじゃないか、オレ。
そうなんだろうけど。
……まあリンともこれくらいふざけた話ができるようになったってことで。



