キョウスケとエイヤは向かい合い、身構える。

ケンカが始まる。

言葉だけじゃ伝わらないような『何か』を拳に乗せるのだ。

オレはそれを、キョウスケの後ろで見る。

となりにサヤとリン。

オレたちからエイヤの真剣な顔が見えた。

その目には決意が見えた。

エイヤは勝てる……そう信じることができた。



数瞬後。

キョウスケが砂を蹴る。

詰まる距離。



「……待って!!」

その時、カナコが叫んだ。

キョウスケが、止まる。

「何かね、カナコ君……」

キョウスケがカナコを向く。

その時には、オレのとなりにいたサヤとリンがキョウスケの腕を取っていた。

しがみつく二人。

明らかな異変に、キョウスケも感づいたようだ。

オレも駆け寄る。

……そう、これが作戦だ。

二人を振り払おうとするキョウスケ。

だが、離さない。

そこでキョウスケの背後から、オレは薄いジャケットを脱いでキョウスケの頭にかぶせる。

顔を覆うようにして、袖を後ろに引く。

それは簡単にキョウスケの視界を奪ってしまった。

「行け!」

オレはエイヤに合図する。