カナコは続ける。
「でも、文芸部でちゃんと向き合うようになって少し変わったんだ」
その少しとは。
「キョウスケくんが本気になるのは、本気で向き合いたい人にだけってこと」
キョウスケは人当たりのいい人間に見えた。
それも取り繕っているだけで……どこかで本音を隠しているのだろう。
ほとんどの人間がそうだ。
きっとサヤが襲われたことに何か思うことがあっても、黙って見過ごしていただけなのではないだろうか。
しかし本気で向き合おうと思ったから、ケンカになった。
「そして、キョウスケくんはきっとエイヤくんが決着を着けてくれるって信頼しているんだよ」
だから今、こうやって距離を置いている。
「……わかった」
エイヤは答えた。
「あの口だけむっつりのために、決着を着ける」
エイヤはちょっと殴られたこと恨んでいないか。
まあ冗談のレベルだが。
「……あいつが殴ったの、一回多かった」
まあ……。



