「リンが!リンの様子がおかしい!!」
オレが叫ぶ。
インストラクターが様子に気付き、しかし慌てない。
リンを見る。
「……過呼吸、でしょうか。とにかく」
腰に吊り下げられた、ケータイより一回り大きい機械――無線機を取り出し、
「――こちら一番船」
連絡を取ってくれた。
インストラクターの無線のやりとりから、どうやら救護艇が来てくれるらしいことがわかった。
舟を止め、それを待つ。
「リン、あともうちょっとだからな」
言っても、反応がない。
リンの顔を覗きこむ。
力なく、目の焦点があっているかどうかも定かではない。
「……もうちょっとだからな」
オレは、リンの小さな肩を抱きかかえることしか出来なかった。
救護艇が着いた。
オレたちの乗っているカッターの横に着き、安定させる。
カッターよりも数倍は大きなエンジンの船。
そこで、担任がリンの体を抱きかかえる。
担任のいつもと違う表情。
……こんなとき冷静な大人は、頼もしかった。
「生徒をお願いします」
救護艇に乗せられる。
乗り合わせていた看護服を着た女性がリンに毛布をかけていた。
救護艇がカッターと離れる。
そして、そのまま港へと戻っていった。
……。
あれ?オレたちは?
「えー、みなさん。あともう少しがんばりましょう」
ちょっと待て。
え……オレたちこのまま?
「じゃあオールを出してください」
――どうやら、それでもオレたちは自力で帰らなくちゃいけないようだった。



