「ここ、いいですか?」

「ああ」



今日も食卓に文芸部部員が集まった。

プラス藤沢、サヤの連れがいるが。

「今日の予定は何なんだ?」

「午前は海でカッター、午後は山歩きだよ」

藤沢は頼りになる。

しかし、山歩きか。

「オレたちをそこまで苦しめたいのか?ただでさえあの階段があるのに」

「……落ち着け。教師も道連れだ」

エイヤの言うとおりだったらいいかもしれない。

「ちなみに一隻のカッターはクラスの半分くらい乗れるんだよ」

「どうして藤沢はそんなこと知っているんだ?」

「ナオキさん、朝の集会で言っていましたよ」

そうだったのか。

しかし、クラスの半分か。

「どうやってクラスを分けるんだ?」

「出席番号。ちなみに僕らみんな同じ舟だから」

「俺は違うが」

わかっている。そもそもクラスが違うから。

オレとリン、藤沢が同じ舟に乗る。

特に何も起こらなければいいけどな。

メンドクサイ。

……オレはそんなことを考えながら、朝食のヨーグルトサンドを口に運んだ。



「……グロテスクな見た目だけどうまいな、これ」

「グロテスクじゃないですよ」

見たらリンもヨーグルトサンドを口に運んでいた。

「だってこれ、サンドイッチじゃねえよ」

液体が挟んであるなんてオレのサンドイッチの定義から外れる。

「こんなデザートだと思えばいいじゃないですか」

そうか、これはデザートに入るのか。

「……スイーツ」

エイヤが言った。

スイーツ、か。

「スイーツ」

オレも思わず口に出す。

……なんだろう、この複雑な気持ち。

「デザートじゃなくて、スイーツ」

もう一回口に出す。

「スイーツ?」

藤沢も口走る。

そうだ、スイーツだ。

「スイーツ」

「スイーツ」

「スイーツ」



オレは手元のヨーグルトサンドを口に放り込んだ。



「なに言ってるんですか、三人とも」