それからゲームでのレース対決が始まった。

無線なので向かい合ってやる必要がない。

オレたちはベッドの中にもぐりこみ、液晶ディスプレイにかじりついていた。



「お前らー、いるかー?」

そこへ担任が見回りに来た。

「……お前ら、もう寝てるのか?」

ベッドにもぐりこんで隠れる。

「健康的な少年ですからー」

その質問に、現在レース一位の奴が答えた。

ちっ、余裕を見せやがって。

「んー。ああ、あとちょっとで消灯だからな。電気消せよ」

多分誰かが消すだろう。

「明日はまた集会場に集合だからな。それじゃあ――」

ドアの動く音が聞こえる。

「――ゲームもほどほどにな」

担任はそう言い残していった。

……バレてたか。





「バレてたね」

下の藤沢が言った。

藤沢はそのことを心配しているようだが、

「大丈夫だろ」

根拠はない。

「担任は多分ゲームをやってたクチだ」

「あの人の高校時代に携帯ゲームなんてあったかな」

それは担任の年にもよる。



「そろそろ電気消そうぜ」

誰かが言った。

「誰か消せよ」

他の誰かが言った。

……いや、お前が消せよ。

「電気に近い人が消せばいいんだよ」

誰かが言った。

……だが、一向に明かりが消されない。

さすがにオレもイラついた。

「……誰だよ!グランプリやろうって言った奴!」

まだまだ消灯できないようだった。