空間がほとんど二段ベッドで占められた部屋を見渡す。
金庫はない。
冷蔵庫もだ。
……仕方ない。
オレは部屋の壁をたたく。
数秒置いて、向こうから壁をたたく音が聞こえた。
「……信号OK」
「一応聞くけど何やってるの?」
何言ってんだ、藤沢。
「普通こういうことするだろ」
「しないよ!」
そんなバカな。
きっとしないのは藤沢だけだ。
「みんな、隣の部屋との信号確認くらいするよな?普通」
オレは部屋の連中に同意を求める。
「ああ、するよな」
「あと、テレビとか金庫とか置いてなくてつまらないよな」
「だよな」
口々にオレに賛成する声が返ってくる。
「ほらみろ!」
「あれ?僕だけ?」
藤沢には常識が欠けている。
「そろそろ夕飯の時間だよ」
適当に決まった二段ベッドの位置。
オレの下になった藤沢が言った。
――どうやらこの部屋の中でも、きちんと時刻どおりに動いているのは藤沢だけらしい。
「しかし、学年全員が集まるんだろ?もっと後のほうがよくないか?」
オレはそんな提案をする。
「いや?学年じゃなくて2クラスだけだよ。食堂の広さからいくと全員座れると思う」
なるほど、予定のほうでもう時間をずらしてあるのか。
それならオレたちがわざわざ遅らせる必要もない。
部屋の面々は夕食を取るため、部屋を出た。



