「はぁい、じゃひとつ!!」
門を閉めようとしたとき、栗崎がジーパンのポケットに手を突っ込みながら叫んだ。
「稜ちゃんはぁ、過去にどんな恋愛をしてきたんですかぁ!?」
やっぱり人を小馬鹿にしたような口調で、少し体を前に倒しながら聞く。
「……てめぇには関係ねぇよ」
栗崎から視線をはずして、門を閉めながら言い放った。
あいつにそんなこと教える筋合いないし。
……過去の恋愛。
今まで全部過去は忘れてきたけど、栗崎に穿り返されたらどうしよう。
うちと中学からずっと一緒にいるやつとかに聞かれたら、きっとみんなペラペラ喋るよなぁ、あのことも、あん時のことも……。
「やべぇ…」
かといって何ができるわけでもないから、仕方なくバイクを置いて、中に入る。
「疲れたぁ!!」
ただいまの変わりにそう叫んで、部屋のベッドに腰掛ける。
中ランのポケットに入ったケータイを取り出して、栗崎の番号を探す。
別に、告白するわけじゃねぇよ?
もう一回、釘を刺しておかなきゃ。

