「昨日のこと?」
組長はまだ白を切り通すつもりなのだろうか。
「はい。…昨日、哲さんとあのあとどうなったんですか」
どうなったって言っても、きっと話し合いくらいで終わってるんだろうけど。
「どうなったも何も……あの後さっさと帰ってったよ、哲のやつ」
「本当に?」
つい疑い深くなるのは、哲さんと組長との間の空気感がヤバかったから。
「本当だって。お前疑い深くなったんじゃねぇか?」
笑いながら組長は言うけど、その顔はどこか後ろめたさを感じてる。
「哲さんの、連絡先ってわかりますか?」
「あいつ、ケータイ変えたみたいだからわからねぇよ。お前こそ、知ってるんじゃねぇのか?」
「この間の連絡は、公衆電話からだったっぽいんで……」
そうだったのだ。
考えてみれば、哲さんがうちの番号を知っているのは当然で、組にいたときに哲さんとは番号を交換してたんだから。
哲さんだけじゃなくて、組長をはじめとする組員全員と。
だから、哲さんから連絡があってもおかしくはないんだ。
うちがケータイを変えてないから。
それに、非通知だったのは公衆電話からか、哲さんの新しいケータイからだったから。
うちのケータイに登録されていないから非通知になるのは当たり前。
もっと早くこの事実に気づけよ、うち。

