出かけると言っても、もちろん学校に行くわけがない。
今日は、岸田組に行こうかと思ってる。
昨日、あのあとどうなったのか知らないし、哲さんの連絡先がわからないから、直接聞くに聞けないし、もし聞けても気が引けた。
こんなうちでも遠慮ってものを知ってるんだから、まだ世界は救われたかも。
とりあえず、組長に会いに行く。
哲さんよりは、聞きやすいから。
そう決めると、凄い勢いでご飯をかっ込み、「ごちそうさまでした!!」と一言、さっさと玄関を飛び出した。
バイクの鍵やら、財布やらは全部中ランのポケットの中。
ポケットに手を突っ込んで、バイクの鍵を取り出し、鍵穴に差し込んでエンジンをかける。
爆音が響いて目が冴える。
ハンドルをしっかり握ると、バイクをスタートさせた。
ここから岸田組の事務所までは大した距離じゃないから、ほんの10分くらいでついた。
「さて、組長はいるかなぁ」
バイクを止めながらそう呟くと、ちょうど隣にバイクが止まった。
「稜じゃねぇか」
「あ、信二!!」
「組長か?中にいるよ、きっと。おいで」
信二とは、うちより5歳くらい年上だけど、気のいい人で俺のこと呼び捨てでいいからなって言ってくれたから、信二って呼んでる。
信二の後ろについて事務所の中に入った。

