Side----------T.Ayamura


「ねぇ、翼ー。昨日稜ちゃんがねー」


始まった。


いつだか、購買付近の階段で出会ったとかいう、学校でも有名な不良少女の話。


学年にその兄弟が2人、いることもまた有名だけど。


うだうだと“稜ちゃん”について悩みを俺に話すこの男。


泣く子も黙る(?)栗崎財閥の息子で、この学校の生徒会長、栗崎友也。


1年の頃から3年連続で同じクラスのため、必然的に仲良くならざるを得なかった、という感じで今に至る。


もちろん、嫌いだけど一緒にいるってわけじゃない。


最初は家が大金持ちだからってどうせ偉ぶってんだろって思ってた。


だけど、実際に関わってみれば、わがままなようでちゃんと人の気持ちを考えてたり、家もいろいろ問題抱えてたりで、案外人間味のあるやつだって分かったから。


「_____でさ。って、聞いてる!?」


ちょっと物思いに耽っていて、友也の話をまるで聞いていなかった。


「ごめんごめん。で、稜ちゃんがなんだって?」


「そっからかよ。もういいよーだ」


ぶー、と頬を膨らませた友也を笑いながらなだめていると、授業の始まりを知らせるチャイムが鳴った。