風呂から上がると、栗崎は息を立てて寝ていた。
「おい、風邪ひくぞ…」
丁寧に毛布を掛けなおして、どうすっかなと頭を掻く。
このまま出てってもいいか…。
「ん……稜ちゃ…」
寝言と共に寝返りを打った奴に、ドキッと胸が高鳴るのが分かった。
あぁうちはこんなにもこいつが好きなんだって痛感した。
こいつもきっと、ちゃんとうちを好きでいてくれてるんだと恥ずかしくも嬉しかった。
家を守るために、こいつと戦うことを選んだのに、まだ揺れている自分が嫌だ。
「悪ぃな、栗崎」
小さく吐き捨てて、中ランを羽織って逃げるように栗崎家を後にした。
「……あれか、友也の恋人で、江戸前の跡取りってのは」
稜がバイクに跨って走り去って行くのを、窓から怪しげな人影が見送った。
人影は、忌々しく吐き捨ててシャっとレースカーテンを閉めなおした。
書斎のデスクに腰掛けて、ふーっと煙草を噴かしたその顔は、どことなく栗崎友也を連想させる。
2,3口吸っただけで、まるで江戸前を潰すかのように煙草を灰皿に押しつぶした。
背広のポケットからケータイを取り出してどこかにかける。
「あぁ、私だ。…例の件だが、すぐに実行してくれ」
簡潔に要件だけ述べると、ケータイを切って椅子に座り、仕事の顔をして資料を読み始めた。

