「……でけぇ…」
いつにも増して、今までで一番、栗崎の家がでかく見えた。
「稜さん、いらっしゃいませ」
いつものように奄美さんが出迎えてくれる。
「もう一度いらっしゃると思ってました」
お互いにまっすぐな目で視線を交わして、小さく頷く。
「坊ちゃんはお部屋にいらっしゃいます。鍵はきっとかかってないと思いますから、かまわず中に入ってください」
得意気な笑みを口元に浮かべて、奄美さんは頷いた。
「さんきゅっ」
グーサインを出すと、そのまま栗崎の部屋の前まで駆け寄った。
スーッと深呼吸して、ノックすると、中から不機嫌な返事が聞こえた。
今は栗崎の機嫌なんか考えてる場合じゃないから、ガチャっとドアを開けて、部屋に踏み込む。
2,3歩足を進めて、背中でドアが閉まるのを感じる。
栗崎は正面のソファにこちら側に背を向けるように座って本を読んでいたけど、なにも反応がないのを不思議に思ったのか、顔をあげてうちの方に振り向いた。
「……稜…ちゃ……」
パタッと本が床に落ちる音が聞こえて、栗崎は固まったままうちを見つめた。

