「あんたねぇ……」
ため息とともに耳に届いたのは、呆れたような聖華の声。
「な、なんだよ…」
こういう声をするときの聖華って、なんだか怖い。
「迷惑ってなに?今まであんたが私に迷惑かけなかったことがある?」
「う……」
この人、やっぱり毒舌だ…。
「別にいいのよ、私はどうなっても。迷惑だなんて思ったこと、一回もないから。
だけど、何も言ってくれないのは寂しいじゃん。
私は、稜が大変なら手伝ってあげたいし、稜が苦しいならなんとか苦しみを軽くしてあげたいの。
私を信じて、頼ってよ…」
「聖華…」
聖華の本音は、いつでもうちの胸にまっすぐ届く。
そんな聖華が大好きだからこそ、やっぱりこれだけは言えねぇ。
これだけは、まだ伝えられねぇんだ。
「……ごめん聖華。分かってるよ、聖華の気持ちも。
でも、今回は、今回だけは……あまりにも聖華の生きてる世界と違いすぎるから。
聖華を巻きこむことはできねぇし、聖華が大事だからこそ、ダメなんだ」
なにがなんでも曲がらないといった意志を声に滲ませながら言うと、聖華は短く息をついた。
「落ち着いたら、なにもかも話すから。
それに、聖華が危ない目にあったら……綾村に殺されそうだから」
最後は冗談交じりに付け足した。

