栗崎に電話をかけようと思ったけど、途中で手を止めてケータイを閉じた。
めんどい、と呟いてベッドに寝転がる。
別に、栗崎がうちの過去を聞きまわって、あのことがバレても、何だっての?
もう過去だもん、栗崎にどう言われようと逃げ切れるような気がする。
それをネタに脅されても、なんとかなるような気がする。
本当は、こんな適当じゃいけないのかも知れないけど、ただでさえ、この家……江戸前一家の後継ぎにされて、気が滅入ってるのに、そんなことまで心配してられない。
三波は親父と平気でキャバクラ行っちゃうし、香矢は不良って柄じゃないから後継ぐ気なんてないだろうし。
そうなると必然的に残るのはうちだけになる。
でも、うちだって後継ぎになる気はまったくない。
どうやったら後を継がなくてもいいようにできるか、ってことを考えながら生活してる。
そんなときに、栗崎がうちの過去を穿り返したところで、今のうちには考えることが多すぎる。
だから、なるようになれってんだ。
何もかも放り出せるんなら良いのに……。
不良にだって、悩みの1つや2つがあるんだ……。

