しかし、ハルは無理矢理段ボールの1つを押しつけただけで、先に歩いて行ってしまう。


「俺はよくない。クラスの仕事より、ステージチェックしてくれないと」

「そんなの、どうだっていいじゃない。どーせ音痴なんでしょー」

「はあ!? 誰がクソ音痴だって!?」


と冗談混じりに怒って、軽く体当たりされた。


「痛いな馬鹿! てか『クソ』まで言ってないし!」


と私も倍の力で当たり返した──


──ちょうどその現場に、ミキが来ていたことも気付かずに──。


「あ、藤間さん! おつかれ!」


ハルが先に気付いた。

暢気に手なんか振って……。



ミキには、仲良さげなシーンに見えたかもしれない。


私は、必死だった。
疑われないか、ただ必死だった。


ミキが、ハルを好きなことを、知っていたから。


私は、好きでも何でもないんだって、分かってもらうために必死で笑って……