「カナエがあんまり遅いから、手伝いに来た」


ミキも必死だった。


分かってる。
顔に書いてるよ。


『ずるい、ハルと話さないで』って……。


分かってる。
だから、あたしは。


「ミキ~! 良いトコに来た!! この段ボール、ハルと二人で運んでってよ。あたしステージの仕事、まだ残っててさぁ」


引きつらないように気を付けて、精一杯の笑顔。


「佐渡?」

「なにしてんのよ、ミキ1人で運ばせる気!? ほら、行って!」


ミキが少し笑ったように見えた。



心のバタバタも収まり切らないうちに、バンド仲間の石田が、体育館の入口から顔を覗かせていた。


「ハルー、リハするぞ」

「おー! これ運んだら行くよ」

「急げよ」


体育館の入口から呼び掛ける男子にも、笑顔で応答しているハル。

その笑顔は絶対に晴れやかで、屈託なくて、好き。


「ハルくん、行こ!」


ミキの笑顔も、花みたいにキレイで可愛くて、好き。


でも。


ミキの笑顔のために無理している私の笑顔は──


──大きらい。