彼女が現れなくなって一週間たったその日、僕はある覚悟を決めて家を出た。途中コンビニに寄って、おにぎりを三個買った。公園に着き彼女がいないことを確認すると、ミネラルウォーターを買って、意を決してベンチに腰を降ろした。今日はここで一日、彼女を待つつもりだ。今日会えなければ、彼女のことは忘れるつもりだ。もし会えれば、その時は聞きたいことが山ほどある。
 一時間ほどたって、僕は早くも後悔していた。彼女を待つことではなく、長丁場になりことは分かっていたのに、なぜ本を持ってこなかったんだろう。暇を持て余した僕は、しばらく体操をしたり、プラプラと園内を散歩したりしてみたが、三十分もするとまたベンチに座って三十分前と同じ格好になっていた。それを何度か繰り返し、やがてドサッとベンチに横になると、そこにはゆっくりと流れる雲が浮いているだけだった。

「時間が止まっているみたいだ。」

 どれだけの時間こうしていただろう。しばらくしてお腹がすいたので、おにぎりを一つ取り出して食べた。
ふと気が付くと、公園ががやがやと賑やかになってきた。子供達が遊びに集まってきたのだ。僕が残りのおにぎりを2つたいらげると、子供達の中でもおとなしそうな男の子が一人、僕に向かって来た。

「ここに住んでるの?」

僕は思わずぷっと吹き出してしまった。

「いや、友達を待ってるんだ。」

「友達?」

男の子は横に首を傾げて、大きな目で僕を見た。

「そう。来るかわかんないんだけどね。」

「ふぅん。」

分かったのか分かってないのか、その子は一人前に腕組みをして何かを考えた後こう言った。

「ねぇ、じゃぁ僕たちと一緒に遊ぼうよ」

思わぬお誘いがかかった。

「何するの?」

「ドロケー!」

ドロケーは泥棒役で逃げる人と警察役で追かける人に分かれて行う鬼ごっこのような遊びで、僕も小学生の頃はしょっちゅうやっていた。

「ドロケーかぁ、懐かしいなぁ。よし、やろうっ!そのかわり俺、強いよ?」

男の子はニコニコッと笑うと、リーダー格の男の子の元に駆け寄って行った。