もうすぐ卒業式だ。
三年生にとっては、喜びと不安が入り交じる行事。ってよく誰かが言うよね

「おーい、秀吉ー」

あの事件以来、ぱたりと女遊びをやめた哲が話しかけてきた

「今日の放課後、買い物に付き合ってくれるかな?あ、いいって?ありがとう」

「いや、勝手に決めつけるなよ!!」

と言ったあと

「つーかおまえだけだぞ。こんな時期に呑気な奴は」


「しけた面したって何も変わらなねーだろ。だったら、明るく生きていこうじゃないか!!」

と明るく言った。

「…おまえ本当、能天気だよな」

哲は「フフフ」と、得意気に笑い、

「俺は今が楽しかったら、それでいいんだー」

と、くるくる回りながらどこかに行ってしまった。

「…あいつ絶対早死にするタイプだ」




「卒業式まで、あと4日だ。みんな悔いの残らないようにしろ」

と先生がお決まりの一言を言う。

猿渡は不思議に思う。
なんの悔いだろうか?と。

好きな人に告白か?
でも振られたら、告白したことを後悔するしな。
部活だって、とっくに引退してる。


「俺が答えてあげよう!!」

いつの間にかいた哲が、胸を反り、自信満々に答えた。

「まず一つ。秀吉は本当に主人公なのか?というところだ」

「いや、話ずれてるだろ」

「主人公にしては、影が薄すぎる。脇役の方が目立ってる。あ、俺のことね」

「しゅ…主人公は、影が薄すい方がいいんだよ…!!それと、後者は余計だ!!」

「それに何の変哲もない、そのしゃべり方」

「普通が一番だろ!!」

「その考えが甘すぎる!!!貴様、ただでさえ影が薄すぎるんだ。だったらしゃべり方ぐらい特徴つけろよ!!!」

「な…なんだよ。語尾に『にゃん』とかつけろとか言うんじゃねーだろーな?」

「では、それで。はい、どーぞ」

「え…あ…、えーっと、もうすぐ卒業式だにゃん…」


言った瞬間、全身身震い、鳥肌がたった。

「よし!!その調子だ。今度は、全世界封鎖に追い込むわけにはいかないか?って語尾につけて」

「いや、長いだろ!!それによしじゃねーよ!!!」

と猿渡は思いっきり哲に、アッパーカットをした。