「じゃあ、俺…帰るな。また、な」


蓮はそう言うと、お母さんにもう一度ペコリと頭を下げると


「じゃあ、な」と、少しだけニカッとはにかんで微笑んだ。


「あ、うん。また…あしたね」



少しずつ遠くなっていく蓮の後ろ姿を見つめているあたしの隣で




「へぇ~美月がねぇ~」


と、意味深な含み笑いを浮かべながらジロジロと楽しそうにあたしの顔を見ていた。



「な、なによ?」


少し照れながら言うと


「別に。なんだか幸せそうな顔してるなって思っただけよ」


そう言ってニコニコ笑いながら家の中に入っていくお母さんに「な、別に。そんなんじゃない」と言いながら


心の中は、蓮に支配されていて…まだ左手に残っている蓮の手のぬくもりを感じていた。