『ぼうし くーださい!』

「いらっしゃいませ」

『ぼうし くーださい!』

「はい」

店の入り口に少年が立っている。
私が出て行くと、ぱっと笑顔を浮かべた。

『おにいさんが、てんちょさん?』

「はい」

"てんちょ"はきっと"店長"のことだろう。

『あのね、お花がいっぱいのぼうし、あるかな…じゃなくて、ありますか?』

一生懸命丁寧に喋ろうとする姿がいじらしい。

「ありませんよ。…ですが、お花でいっぱいなら、虫が寄ってはきませんか?」

『あっ…そっか……』

少し落ち込む少年。