「おや?」

『はい?』

「お客さん、いいのですか?」

『何がですの?』

「時間。娘さんが待ってますよ」

『あら?さっきまで…』

「他の買い物も行くのなら、早い方がいいのでは?」

『そうですわね、これ…』
客は私に50ミルと櫛を渡す。

「これは…?」

『少し考えてみましたの。それで、やっぱり50ミルじゃ少ないと思いましたので…』

少しの間をおいて、客は言う。

『わざわざ作っていただいたお礼ですわ。受け取ってください』

「ありがとう、ございます」

客は少しはにかみながら、店を出ていく。


さて、今日はもう閉めますか。

時計の長い針が、3回転する。

それでは皆様、良い夢を…