職人の娘。

お母さんのハスキーな声が、震えてた。


咄嗟の判断


あたしは、ぎゅっと目をつむった。


洗いざらしのような、半乾きの髪。


目を開けて見られたら、どんなにいいだろう。


もう、ここ何年と髪を結んだお母さんしか見ていない。


「残してやるから…母ちゃん、アンタの為に」


まさか起きているとは知らず、お母さんはあたしに語りかけた。


残す…??


残すって何を?


「ごめん」


最後に一言だけ呟いて、お母さんは部屋を出て行った。


目を開けて、お母さんが立っていたであろう場所を振り返る。


当然そこには何もないし、誰もいない。


お母さんの匂いだけが、そこに残ってた。